2013年11月23日土曜日

ふるさと銀河線


 髙田郁 『ふるさと銀河線 軌道春秋』 双葉文庫 600円+税 

 髙田郁、初の現代家族小説9編。元は、小説デビュー前に「川富士立夏」の名前で書いた漫画原作「軌道春秋」。1999年~2004年「YOU」(集英社、漫画・深沢かすみ)連載。

 鉄道・沿線風景を織り込んだ人情物。ほとんどの作品に、髙田らしい質素だが暖かい食べ物が脇役として一味加える。

 
「お弁当ふたつ」

 佐和は中年メタボの夫のために毎日弁当を作る。ある日、ママ友とランチのあと、夫の会社に差し入れを持参。受付嬢に名乗ると、退職したと告げられる。顔なじみの部下がいたので事情を訊ねる。リストラ、それも2ヵ月前のこと。夫は毎朝弁当を持ってどこに行って帰ってくるのか? 翌日、夫のあとを追う。千葉まで行き、外房線・内房線で房総半島を2周、車内で弁当。子どもが小さい頃、海水浴に行くのに乗った電車。次の日、佐和はもうひとつ弁当を作って、夫のあとを……

 
「車窓家族」

 阪神間の私鉄沿線。電車が信号待ちで止ると車内から文化住宅の部屋の様子が見える。時間はまちまちだが、その部屋の老夫婦を気にする乗客たちがいる。食卓の料理が見えてそれを食べたくなる人、繕いものをしている老婆の姿に故郷の母親を重ねる人、老夫婦の笑い顔に亡き夫との歳月を想う人……、計5人。大寒を過ぎた頃、彼らが偶然同じ車両に乗り合わす。いつもの信号待ち。あの窓に明かりがついていない。2日連続らしい。5人がそれぞれ心配して、いつのまにか会話を交わしだす。しばらくすると、

……

「あ、明かりが」。

 あの部屋から眩い光が溢れていた。

「ああ、電灯が新しなって……

……

 皆安堵、バンザイをする若者も。

 

 表題作「ふるさと銀河線」は北海道東部の「ちほく高原鉄道」(現在「ふるさと銀河線りくべつ鉄道」)が舞台。

 中3の星子(せいこ)は両親を交通事故で亡くし、鉄道運転士の兄と暮らす。高校受験は公立の福祉科志望、地元で働くと決めている。星子は全国演劇コンクールで優勝の実績があり、兄も先生もその才能を伸ばしてほしいと思っている。

星子、自分が書いた独り芝居「銀河鉄道の夜」の台詞が口に出そうになる。

――ぼくたちは何処までだって行ける切符を持っているんだ

――カムパルネラ、ぼくたち一緒に行こう――

兄を置いて町を離れる決心がつかない。

体験学習で顔なじみの天文台の技師が話してくれる。彼は東京の老舗の跡取りだが、自分の夢に進んだ。家族も許してくれた。

……

「町を去るひともあれば、戻るひともある。僕のように、新たにこの町に来るひとだっている。それでも、故郷に心棒を持たないひとはいないし、心棒があるからこそ、人は羽ばたく勇気をもてるんだと思う」

 羽ばたく勇気、と低い声で星子は繰り返した。(略)

――ぼくたちは何処までだって行ける切符を持っているんだ――

 独り芝居の自身の台詞が、はっきりと耳に届く。

「羽ばたく勇気……

 星子はもう一度、繰り返した。

……

 

 離れて暮らす祖父を訪ねる家出孫、亡くなった息子の思い出を辿る両親、仕事と青春の郷愁、夫婦別居、ひとり暮しの母のアルツハイマー……、さまざまな家族愛、友情が描かれる。

  コミック版も12月、同社より。

 

 日記 1122日 金曜日

 ハローワーク行って、J堂で岩波新書買って、映画見て、「くとうてん」でゴローちゃんとだべって編集長に見とれて【ほんまに】ゲラ見せてもらって鳥瞰図絵師のノート買って、元町商店街の事務所で「TOWN NEWS」もらって、6丁目で北播磨の野菜買って、帰ってボーっとしていたら「ギャラリー島田」から通信が届いて夕飯の仕度しようとしたら元同僚クマキからメール来て返事書いていたら仕度すっかり忘れとった、という一日。
「百窓市」いよいよ24日。
https://twitter.com/enfant507/status/395418418859364352/photo/1

(平野)