2013年12月30日月曜日

神戸読書アラカルテ(3)


 【海】史 (9―3

 『神戸読書アラカルテ』(3

 島田誠社長(当時)の寄稿は第8号が最初。

「この生きる重みを伝えたい 林竹二さんの本」

 林竹二(1906~1985)は哲学者・教育学者で元宮城教育大学学長。兵庫県立湊川高校(夜間高校)で行った授業実践ドキュメント3冊を読んで。

『教育の再生を求めて』『写真集 学ぶこと、変わること』(筑摩書房)、『教師たちとの出会い』(国土社)。在日、部落、落ちこぼれなど、問題を抱えるその生徒たちとの授業記録。生徒、先生方の感想文、授業風景がまとめられている。

――この三冊は、若干重複し、補完し合いながら、全体として林竹二さんの「湊川で軌跡が起った」ことを生々しく伝えてくれる。この記録は単に、教師たちや、子を持つ親たちだけのためのものでは決してない。人間の「生きざま」を求めるすべての人に深い真実を伝えるものだ。この本の読後感は、ちょっと筆舌に尽くし難い。彼等の壮絶な生きざまに、不覚にも、泪滂沱としてとどまるところを知らずという状態に立ち至った。恐らく、すべての人にとって「己れの生きざま」への強烈な励ましになることを疑わない。すべての人に林竹二さんの、これらの本をおすすめしたい。――

 本の話が続くのだが、第13号では「拝啓! 万引諸君!」と題して、頻発する「万引」に怒りを持って抗議する。

(防犯設備をものともせず)「刻苦勉励の腕前は、まさに職人中の職人、プロ中のプロと、全く敬服している次第~」

(被害の額)「私共全員のボーナスの半分位は差しあげている勘定~」

(万引の目的と発覚の代償)「高価な代償を賭けて、たいしてお金にもならない行為に全精神と、情熱を傾けつくすことは、世の中すべて損得だけで働くことの多い昨今、見上げたアドベンチャースピリットですね。~」

 皮肉たっぷりに訴えるのだが、彼奴らがこのような文章に目をくれる訳もなく、被害は続く。

5ヵ月後の第35号で「続 拝啓、万引諸君」。捕まえたら、年配の紳士で顔をよく知り話もしたことがある人。

――万引は小悪デス。心臓に、絶えず小骨をつきさして生きるのも、お互いやりきれませんなあ。――

 最後に詩を引く。

ひつこいことは言いまへん  こなな ぼけな ごじゃなことを

やめさせておくなはれ  これこのようにたのみます  おがみます  
 
ああ ああ ああ ああ

(野上彰「阿波祈祷文」より
 
 
 

◇ 恋人たちの冬の夜
 
 JAZZ SONG BOOK ジャズ ソング ブック』
構成・絵・訳詩 五味太郎 リブロポート 1988 絶版
 

Baby It’s Cold Outside
Wards and Music by Frank Loesser
 カップルの楽しいひと時の会話。
 
帰らなくちゃ  でも外はさむいよ
もう行かなくちゃ  でも外はさむいよ
とっても楽しかった  来てくれるのをずっと待ってたんだ
母が心配するわ  手をかしてごらん ほら こんなに冷えてる
父がおちつかなくなるわ  きれいだよ、何、そんなに急いでるの
わたし、ほんとに急がなくちゃ  きれいだよ、急がないでおくれよ
じゃ、もう半分飲もうかしら  ぼく つぐから レコードかけてよ
(略)
ほんとに、かえらなくちゃ  ねえ、いやがらないでおくれよ
ああ、でも外はさむそう  外はさむいよ
 

(平野)
 
「みなと元町 TOWNNEWS」 (NO.257 2014年1月1日)発行。
 
「【海】という名の本屋が消えた(2)」は、竹中郁と堀辰雄の交友。
 
元町商店街で配布中。商店街のHPには来月アップされるはず