■ こまつ座編 『井上ひさし「せりふ」集』 新潮社 1200円+税
こまつ座30周年。
井上戯曲70作から107のせりふを収録。
○ 泣く・笑う
○ ことば・創り出す
○ 恋・友情
○ 生と死
○ 人間
○ 世の中
○ 啖呵
涙は各自(てんで)に手分けして泣くのがいいのですよ。
「頭痛肩こり樋口一葉」
赤ん坊を泣かすも怒らすも簡単ですが、笑わすのはじつにむずかしい。このように人びとの頬をゆるめさせるのは極めつけの難事業。
「キネマの天地」
人を恋シル時(ドキ)、人と仲良く(ナガエグ)シル時(ドキ)、人をはげまし人がらはげまされッ時(ドキ)、いつ(エヅ)でも言葉が要(エ)ル。人(シト)は言葉が無(ネ)くては生きられない(イギランニエ)。
「國語元年」
世の中にモノを書くひとはたくさんいますね。でも、そのたいていが、手の先か、体のどこか一部分で書いている。体だけはちゃんと大事にしまっておいて、頭だけちょっと突っ込んで書く、それではいけない。体ぜんたいでぶつかっていかなきゃねえ。
「組曲虐殺」
恋人にふられたら「よかった、女性が彼女一人じゃなくて」とおもうこと。
「ロマンス」
溜息は命を削る鉋(かんな)かな。生きていてなにが辛いといって溜息をつくぐらい辛いことはねえんだぞ。
「雪やこんこん」
過去の失敗を記憶していない人間の未来は暗いよ。なぜって同じ失敗をまたくり返すにきまっているからね。
「闇に咲く花」
急げばきっと薄いところが出来てくる。そしてかならずやその薄いところから破れがくる。
「黙阿彌オペラ」
あの悲しい戦争から引き出されるべき教訓はただ一つです。すなわち「明日のことはわからない、今ある酒は今日のうちに呑め」。
「夢の泪」
他人からいわれなく金もらったり、おごられたりするの、おれもいやだな。おれ、きっとなんかお返しするもんな。
「浅草キヨシ伝」
一言一句を創り出すために作家たちは命を削っている。日本語の美しさ、響き、強さで表現する。井上はその言葉で「笑い」も創り出す。
こまつ座でも活躍した俳優・すまけいさん、7日逝去、78歳。
◇ 日記 12月10日 火曜日
ロフ子さんの連載始まった普通ならデッタイ手に取らないであろう雑誌元町で購入。だって【海】のことをヒトコマ描いてくれてるんだで~。
夜、周防大島・半農・ちょい漁・もひとつちょい出版Y社主、F店長とわれらが「赤松」。Y社主から市場に出せない「難ものみかん」、店長から姫路変態倶楽部作成動画のパンフレット(動画は非公開らしい)「神戸元町に海文堂書店があった」をもらう。
(平野)