2013年12月19日木曜日

父の戒名をつけてみました


 朝山実(じつ) 『父の戒名をつけてみました』 
中央公論新社 1500円+税

 朝山は1956年生まれ、いろいろな職業(出版営業も)を経て、東京でライター。雑誌で人物ルポ、書評、インタビューなどを手がける。著書に『アフター・ザ・レッド 連合赤軍 兵士たちの40年』(角川書店)など。

 本書は、20113月に離れて暮らす父親が亡くなった後の騒(葬)動いろいろ。

 父は一人暮らしが長く、亡くなる前は介護施設。朝山には姉二人と兄がいるが、交流があるのは次姉だけ。旧家の複雑な血縁があった。朝山だけが時々見舞っていた。朝山、「喪主は、ぼくがするから」と家族葬を宣言した。

 

目次

一日目     住職から恫喝を受けました

二日目     戒名料は「お気持ちで」

三日目    「わたし、見ちゃったんです」

三週間後   檀家はやめるの、やめないの?

五週間後   ハラコセキの哀愁

七週間後   請求二億円!? 「争族」の始まり

四ヵ月半後 前倒しの初盆

六ヵ月後   お坊さんの派遣会社をクビになったひとと会う

六ヵ月半後 お坊さんの個室に潜入してみた

八ヵ月後   お布施は大根一本でもOK

一年後     税理士さんに聞く 三千万円から五千万以下がもめる!?

一年三ケ月後 体験者に聞く 戒名なしでも葬儀は行える

一年半後   橋爪大三郎さんに聞く 戒名はバレンタインチョコ

付録 調べてみました  戒名料、お布施、葬儀代金、俗名で葬式は可能? 

参考文献 読んでなるほどと思いました  戒名、葬式、お坊さん

あとがき

 

 父は生前から「葬式なんかいらん」「坊主は頼まんでええ」と言っていた。朝山が「戒名はボクがつけよか」と言うと笑っていた。朝山は宗教学者が書いた戒名・葬式の本を読んでいた。自分でつけようと思った。

 
――これがその後のもめごとの発端になろうとは、そのときは予想していなかった。――

 

葬儀社はタウンページで見つけた。大きな広告は除外して、小さな広告の「親身なことば」で選んだ。戒名のことを相談すると、家族がつけるのは「供養」になるが、お寺には「慎重に気を遣って話して」と注意された。

 檀那寺の住職は最初から威圧的。戒名を考えてあると言うと、

――あなたが、どんなご職業をされているのか知りませんが、仕事をされていれば、おわかりになるでしょう。どんなビジネスにも、立ち入ったらいけない領分があるのは。――

 この「ビジネス」という言葉にひっかかった。お坊さんの本音なのでしょう。こちらは穏便に収めたいが、坊さんは興奮、墓に入れない、先祖代々の墓もどうなるかわからん、と恫喝。葬儀社社長が「故人の遺志」と押し通せとアドバイスしてくれる。別のお寺紹介可能、無宗教葬もある、と。

 檀那寺のお参りを断わった。父は母の葬儀でお布施と別に戒名料を百万円包んだと聞いていた。

 葬儀社の紹介で別のお坊さんを頼んだ。お布施と別に形式として「戒名料」を包んだ。葬儀は無事すんだが……
 檀那寺とのその後、それに遺族。
 父はかなりの資産家。そう、相続=「争族」勃発!

 本書の元は、朝山が週刊誌に書いた「戒名騒動」記事。その後「位牌」「卒塔婆」について書いているうちに、シリーズタイトルが「喪主はつらいよ」とつけられた。
 
(平野)