■ 朝山実(じつ) 『父の戒名をつけてみました』
中央公論新社 1500円+税
朝山は1956年生まれ、いろいろな職業(出版営業も)を経て、東京でライター。雑誌で人物ルポ、書評、インタビューなどを手がける。著書に『アフター・ザ・レッド 連合赤軍 兵士たちの40年』(角川書店)など。
本書は、2011年3月に離れて暮らす父親が亡くなった後の騒(葬)動いろいろ。
父は一人暮らしが長く、亡くなる前は介護施設。朝山には姉二人と兄がいるが、交流があるのは次姉だけ。旧家の複雑な血縁があった。朝山だけが時々見舞っていた。朝山、「喪主は、ぼくがするから」と家族葬を宣言した。
目次
一日目 住職から恫喝を受けました
二日目 戒名料は「お気持ちで」
三日目 「わたし、見ちゃったんです」
三週間後 檀家はやめるの、やめないの?
五週間後 ハラコセキの哀愁
七週間後 請求二億円!? 「争族」の始まり
四ヵ月半後 前倒しの初盆
六ヵ月後 お坊さんの派遣会社をクビになったひとと会う
六ヵ月半後 お坊さんの個室に潜入してみた
八ヵ月後 お布施は大根一本でもOK?
一年後 税理士さんに聞く ●三千万円から五千万以下がもめる!?
一年三ケ月後 体験者に聞く ●戒名なしでも葬儀は行える
一年半後 橋爪大三郎さんに聞く ●戒名はバレンタインチョコ
付録 調べてみました 戒名料、お布施、葬儀代金、俗名で葬式は可能?
参考文献 読んでなるほどと思いました 戒名、葬式、お坊さん
あとがき
父は生前から「葬式なんかいらん」「坊主は頼まんでええ」と言っていた。朝山が「戒名はボクがつけよか」と言うと笑っていた。朝山は宗教学者が書いた戒名・葬式の本を読んでいた。自分でつけようと思った。
葬儀社はタウンページで見つけた。大きな広告は除外して、小さな広告の「親身なことば」で選んだ。戒名のことを相談すると、家族がつけるのは「供養」になるが、お寺には「慎重に気を遣って話して」と注意された。
檀那寺の住職は最初から威圧的。戒名を考えてあると言うと、
――あなたが、どんなご職業をされているのか知りませんが、仕事をされていれば、おわかりになるでしょう。どんなビジネスにも、立ち入ったらいけない領分があるのは。――
この「ビジネス」という言葉にひっかかった。お坊さんの本音なのでしょう。こちらは穏便に収めたいが、坊さんは興奮、墓に入れない、先祖代々の墓もどうなるかわからん、と恫喝。葬儀社社長が「故人の遺志」と押し通せとアドバイスしてくれる。別のお寺紹介可能、無宗教葬もある、と。
檀那寺のお参りを断わった。父は母の葬儀でお布施と別に戒名料を百万円包んだと聞いていた。
葬儀社の紹介で別のお坊さんを頼んだ。お布施と別に形式として「戒名料」を包んだ。葬儀は無事すんだが……。
檀那寺とのその後、それに遺族。
檀那寺とのその後、それに遺族。
父はかなりの資産家。そう、相続=「争族」勃発!
本書の元は、朝山が週刊誌に書いた「戒名騒動」記事。その後「位牌」「卒塔婆」について書いているうちに、シリーズタイトルが「喪主はつらいよ」とつけられた。
(平野)