◇ 年の瀬
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迎春の心はしずかにありたいものである。歳末を忙しくおくらないですむことはたった一つのぼくの幸福だといえるかもしれない。
追いかけてとるべき金もなく、といって追いかけられてとられる金もない境遇のまけ惜しみということなかれ。町の雑踏に歩して多忙と縁のないわが身を顧みては、まあこれでよかったと思うのはもともとが懶惰の性に生れついたものの、いつわりなく心からそう感じるところなのである。……
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中国文学者・奥野信太郎「机辺歳晩」(高橋輝次編『書斎の宇宙』ちくま文庫所収)より
中国文学者・奥野信太郎「机辺歳晩」(高橋輝次編『書斎の宇宙』ちくま文庫所収)より
年末の一日、机の周辺整理中。文房具それぞれに若き日学んだ中国の思い出が蘇る。
文鎮。楊という人が本を売却すると聞いて行ってみると、本は売りつくして何もない。主人は机上から文鎮をとりあげて、学生だった娘の遺品だと言う。
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これをみると思出してよくないからもっていってくれとぼくに渡したものである。楊氏は夫人と娘とを失い、すっかり悲観していたものらしい。あれから十五年、楊氏はたして健在なりや、ぼくはその後の消息を知らない。
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これをみると思出してよくないからもっていってくれとぼくに渡したものである。楊氏は夫人と娘とを失い、すっかり悲観していたものらしい。あれから十五年、楊氏はたして健在なりや、ぼくはその後の消息を知らない。
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◇ 『ほんまに』第15号
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