2014年1月23日木曜日

月刊神戸読書アラカルテ(8)


 【海】史(10)―8

 『月刊神戸 読書アラカルテ』(8

市井仁(その2

15号掲載 『本棚の片隅から 雑誌篇() 「落丁」――書店読書誌の先駆――

「書店読書誌」の先駆的存在、大阪「書肆青泉社」発行『落丁―読書のしおり――を紹介する。

「青泉社」は堂島にあった本屋。経営者・木村英造は本屋のかたわら私財を投じ「淡水魚保護協会」を設立。出版活動を通じて自然保護運動に尽力した。協会は94年に解散したが、木村はその後も活動を続けた。「青泉社」閉店の正確な時期は不明(現在出版界のドンに照会中)。
 
 1月24日追記
 執筆者・市井さんにお尋ねしたところ、さっそく調べてくださった。
「青泉社」は1996年5月閉店、朝日新聞のビルに支店があり、そちらは98年6月閉店。元の店舗から「青泉社ビル」=ツインビルに移ったのだが、そのビルも名称が変わっている由。
 市井さん、寒い中、調査ありがとうございます。
 
 
――大阪のメインストリートの1つ、四ツ橋筋に面して、毎日新聞の大阪本社があるが、その道路をはさんだ向い側、ウッカリすると見過ごして通り越してしまうほどに目立たない広さ15坪ほどの小さな書店、一般読書人よりも、むしろ出版業界人により知られた存在だといえる書店は、その噂を聞いて初めて訪れる人には意外に映ることだろう。ただし、店内の書棚に陳列された書籍を11冊ながめわたせば、「落丁」誌上で展開される硬派の業界人としての論理と、紹介されるブック・リストの内容も納得がいく。――

 さて、『落丁』。196310月から7511月まで、13年間で29号発行。

――毎号綿密な取材を要したであろう読みごたえのある特集と、青泉社の立場からえらんだブック・リストを掲載している。昨今、どこでも発表されている似たりよったりのベスト・セラーではないブック・リストを通読すれば、本とは何かということに対する、この書肆の抱く単明な主張が感じとられる。

 印象に残る特集を挙げている。

或る小さな出版社の話:3号(1964.6

ある編集者の歩いた道:4号(1965.4

何故関西では出版は育たないか? :5号(1965.10

本が商品であることのむつかしさについて:7号(1966.6

本は買われた後でどうなるか:8号(1966.10

書店の万引について:10号(1967.6

大型書店問題を考える:18号(1970.2

……

それぞれの特集について説明。出版物、出版人紹介。出版界分析。返品。万引、読書週間など業界のタブーも。

――こうした良質の企画と困難な取材による特集とが、一書店の店主の独力で刊行されていたことに深い敬意を払いつつも、それを支えていた固定読者層の存在を想像すれば、目に見えぬ糸で結ばれた読書人の連帯を感じ、羨望の念を禁じ得なかった。だがしかし、書籍販売を通じて良質の読者層を獲得・形成していくことと、商いの上でも隆盛の道を辿ることとは、良書であり、かつ大量の読者に受け容れられる書物と同様に、大変困難な命題である。主宰者木村英造氏も、折に触れてそうした意味のことを語っておられるが、悪貨は良貨を駆逐するが如き業界の変化を目の当りにして、「落丁」続刊の意欲を阻喪されたことが、期待空しく中絶となっている主原因であるという。現在のところ復刊する意図ももたないということである。――

 市井、復刊は「ないものねだり」だとわかっている。出版業界(本屋業界も含め)のマス・セールス、やっつけ仕事の本、経費削減・利益優先の現状を憂う。それでも、豊富な資金力で成功するのを見聞きすると「複雑な心境」に陥る。

 最後に発行中の書店読書誌に向けて。

――たとえ一年に一回だけでもいい、われわれ読者の蒙を啓いてくれるとともに、出版界の真の事態がいかなるものであるのかを衝くような」記事が掲載されることを大いに期待したい。――
 
 
 
 
 

 ぜひ『落丁』現物を拝見したいと思うが、今となっては無理か。


 『ほんまに』営業で、ゴローちゃん&プーおじさん京都珍道中。内容は恥ずかしくて言えない。個人的にお聞きになりたい方は「くとうてん」まで。

 恵文社一乗寺店、古書善行堂とも売り切れで追加注文を持参。ありがとうございます。

 恵文社では店長さんとブログで紹介してくれたYさんにお会いできた。

 善行さんには激励と励まし(おんなじやん!)、今後のアドバイスをいただいた。

 いよいよ在庫、底が見えてきました。読者の方々、販売くださっている皆様に感謝いたします。
(平野)