■ 稲垣足穂 『タルホ座流星群』 大和書房 1987年2月新装版(初版は73年6月刊)
装幀 中島かほる 挿画 亀山巌
昭和40年代に雑誌(ミニコミが多い)に発表した作品群。
目次 神戸三重奏 空間の虹色のひづみ 紫色の35mmのきれっぱし 「後庭花」雑話 「タイル」方丈記 続アドラティ=バウァナ 白いニグロからの手紙 我が棲いはヘリュージョンの野の片ほとり厭わしきカルニアの運河に沿うた地下墓地だ 誰にも似ないように 我が見る魔もの Curtiss! Curtiss! タルホ座流星群 バブルクンドの砂の嵐
「タルホ座流星群」 初出は『小原流挿花』昭和47年(1972)10~12月号。「一千一秒物語」昭和版(?)
ある晩、黒猫をつかまえて鋏でしっぽを切るとパチン! と黄いろい煙になってしまった 頭の上でキャッ! という声がした 窓をあけると 尾のないホーキ星が逃げて行くのが見えた
花を愛するのに植物学は不要である。昆虫に対してもその通り。天体にあってはいっそうその通りでなかろうか?
お巡りさんはアッと声をあげた。何と! 正面に開いている月夜の窓、空気のほかには何もない突き抜けの四角い枠の中から、数秒間ごとに、月夜そのものが薄くはがし取られているのであった。
……
最後のフレーズは「一千一秒物語」と同じ。
ではグッドナイト! お寝みなさい 今晩のあなたの夢はきっといつもとは違うでしょう
(平野)