■ 稲垣足穂 『彼等―they―』タルホスコープ 現代思潮社 1974年9月刊
タルホスコープ構成 川仁宏
解題 萩原幸子
目次 彼等(they) 菫とヘルメット 蜩 レーディオの歌 北落師門 菟(lepus) 古典物語 明石
『彼等』は1948年桜井書店刊。『明石』も同年小山書店刊、63年木村書店再刊。
現代思潮社は69年から70年にかけて足穂作品を『足穂大全』(全6巻)にまとめたが、収録できなかった作品を“タルホスコープ”として本書他全4巻(『桃色のハンカチ』『ヰタ マキニカリス』『弥勒』)に収めた。
『彼等(they)』
香水をつけている男子転校生F君(病気療養中に亡くなる)、師範学校附属小に通う年上の松浦さん、身体が弱く学校に行けない赤沢さん、叔母さんと二人暮らしの発ちゃん(兄さんが大学野球選手)、中学受験の予備校に行っているお寺の坊ちゃん、瞳の大きな睫毛の長い混血児みたいな角谷さん……懐かしい少年時代の友たち。彼らの多くは若くして亡くなってしまった。
本書、私は古本市で入手。ページ上部がうまく裁断されていない。こういう本がごくたまにあって、お客さんは「不良品だから交換して」と言ってきはります。交換には応じていましたが、私はこれは「福紙」と先輩に教わりました。「えびす紙」ともいって、めったにないことなので“縁起もの”です。広辞苑にも載っています。信用してください。
それから本書には前の持ち主の“痕跡”メモが入っていました。