2014年5月30日金曜日

「はみ出し者」たちへの鎮魂歌



 海文堂生誕まつり「99+1」 


記念展 5月31日(土)~6月11日(水)12:00~19:00

(火曜日は18:00、最終日は16:00まで)

ギャラリー島田 1階deux


海文堂ギャラリー&ギャラリー島田ゆかりの芸術家作品展(展示と販売)。

海文堂書店の歩みを写真と資料で紹介。

海文堂書店関連の出版物販売。

○100周年記念ポストカード作成・販売。

土日限定「古本市」。


 正津勉 『「はみ出し者」たちへの鎮魂歌  近代日本悼詞選』 平凡社新書 780円+税

 正津は1945年福井県生まれ、詩人。

 日本最古の歌集、『万葉集』には挽歌が二百数十首も収録される。挽歌は本来、野辺送りの柩の車を引きつつ唱えられ、死者の魂を呼び戻すよう、鎮魂の思いを込め詠まれた。
 挽歌を詠む。すなわち死者を悼むということは、いわば死は生を写す鏡なれば、みずからの人生を顧みさせずにおかない。死者の魂は、いささか神懸かった表現をすれば、生者に憑く。……

 大伴家持の妻を思う歌、山上憶良が旅の途中で死んだ若者を悼む歌を紹介。先人たちは、つねに真摯に死者を偲び、死者を悼みつづけてきた。

……あえていうならば、それこそ生き残った者が担うべき大きな務めの一つとして、つたえてきたのだ。 

 本書は明治から100年にかぎって、悼詞を選ぶ。おおよその方針。
 受ける者と捧げる者とが、死別してもなお、「賛仰なり、訣別の心や、志の継承や、反撥なり、つよく両者間を繋いで」あること。
 悼詞そのものが、「死者の生涯を語っていよう、一篇のモニュメント」たらんとあること。
○ 門下の誰それ・同業者の追悼のたぐいは除外。

 正津曰く、人選は片寄っている、くせのあるものが並ぶ、「はみ出し者」たちめいたメンバーばかり。

大石誠之助へ 与謝野鉄幹  大杉栄へ 中浜哲  永山則夫へ 大道寺将司  辻潤へ 辻まこと  谷川徹三へ 谷川俊太郎  山之口貘へ 金子光晴  牧野信一へ 川崎長太郎  鮎川信夫へ 吉本隆明 …… 

 著者が詩人だし、詩人から詩人に贈った詞を。

《IL 三》 金子光晴

『キリストだとばかりおもつてゐたら、おや、君は、死んでるはずの
貘さんぢやないか。どうして、また」

汗でべつとりとくつついたヅボンが、朝涼になつて
ひとりでにかわいて、それがすねからはがれるまで、
夜通しあるきつづける彼と、僕は、つれ立つてあるいてゐた。
 …………
『僕がキリストなんですつて? それは、どういふことでせうか。
僕は、生きかへつてでも来たやうなやうすで、それがなんだか羞かしいんです
けど、
やつぱり、いけなかつたのですか』
貘さんは、申し訳なささうな、てれくささうな、
寂しい笑顔をしてみせる。

いけないどころか、こんなたのしいことはないのだ。

 
 貘と光晴の出会いから別れまでは、本文を。

(平野) 
 著者は皆を悼んでいる。


『ほんまに』新規取り扱い

大阪女子の古本屋「本は人生のおやつです!!」さんが取り扱ってくださっています。バックナンバーもあり。ありがとうございます。 
TEL 06-6341-5335



「神戸新聞」5.30朝刊 海文堂イベント紹介いただきました。またもスケベ面なのでカット。