2014年7月27日日曜日

すべての聖夜の鎖


 らもん 『全ての聖夜の鎖』 監修 小堀純 復刊ドットコム 2700円+税 A4判

 解説 「全ての聖夜の鎖」 諏訪哲史

「中島らも」以前。
 1979年自費出版、限定100部制作。2000年文藝春秋より復刻。
 没後10年記念、らも幻の処女作・掌篇小説3篇に詩とエッセイを収録する。

 

「薄明に野の祈り容れられず 斯くて夜はきしむ卵となりぬ」

 その夜、夜間飛行のパイロットは海岸線に不思議なものを見た。三つの蒼白い炎が結ぶ二等辺三角形である。それは暗い波頭と、さらに暗い陸地の結節点に、太古からの紋章のようにポツンと輝いている。

「誰かが夏を密葬しておるのだ」

 彼はそう考え、既視感にともなうあのほろ酸い悲しみに抱きしめられる。

……

 大爆笑モノではなく、クスリや酒の勢いでもない。
 若さと情熱。

 復刻版発行時の言葉。

 その頃おれは印刷屋の営業マンとして、先ゆき自分が文章でメシをということは考えもしなかった。
 野心がない。
 その分、ピュアな一冊だといえる。

 広告マンになる前のこと。

(平野)