2015年10月6日火曜日

詩は友人を数える方法


 長田弘 『詩は友人を数える方法』 講談社文芸文庫 19996月刊



雑誌『群像』に連載したアメリカ旅行記。単行本は199311月講談社より。

《北アメリカを旅し、旅をつづけることを、ずっと繰りかえしてきた。短い旅、ながい旅をして、三万マイルあまり(ほぼ五万キロ)ほど往還をかさねるうちに、気づいたのは、そうしてつづけた旅の記憶が、ものがたりのように一つながりの時間をもたない、ということだった。旅といっても、一人で旅して、じぶんで車を走らせ、ほとんどはカントリー・ロードを走り、地図を読み、黙って、風景のなかにはいりこむ。ただそれだけだ。》

 地図とともに持ち歩くようになったのが詩集。
 サンフランシスコの「本」という本屋で買ったウォレス・スティーヴンス。

《走りぬけてきた風景に語りかけられるような感覚に、確実にとらえられた。》

 ニューオリンズの古本屋で買った詩集には1500マイル離れた図書館の蔵書印があった。

《本もまた旅をするのだ。》
 
「オープン・ロード・オード」 ジョン・ハートフォード

大道(オープン・ロード)
僕はもどりたい。
見えるかぎり
遠くまでゆく道だ。

大道(オープン・ロード)
ぼくの恋人で、
「どこか」というところで、
ぼくを待っている。 (後略) 

 インディアナ州の狭い本屋で、フィリップ・アップルマンという人が子どもたちに書いた「二十一世紀へのメモ」という詩集を手にした。自然豊かな田園の町だったインディアナ。道路は車のために舗装され、畑は更地になり、次は森。コンクリートで固められる21世紀に生きるきみたちに知っておいてほしい。

「二十一世紀へのメモ」

きみたちの足下には、地球とよばれる
とても脆いものがある。知っておいてほしい。
インディアナでは、ものみな、そこから育ったのだ。

 

 長田は自由に旅をし、風景にひたり、詩を読む。

《旅にあって、詩は、おもいがけなく親しい言葉に、差しで出会った場所だった。詩は人を孤独にしない。詩は友人を数える方法だ。》

(平野)

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