2015年12月28日月曜日

舜臣&乱歩


 陳舜臣&江戸川乱歩

『ほんまに』第17号に関連することが新聞と私が読んでいた本に。

「朝日新聞」1228日夕刊、文化欄「文芸この1年」より。
 今年最大のベストセラー『火花』他、「多くの魅力的な物語」を紹介する。高齢者と若者、戦争と戦後70年、それに東日本大震災に向き合う作家たち。

《あの震災とどう向き合うべきなのか。すべての作家が直面した問いの答えが、少しずつ形をとり始めている時期なのだろう。
 今年1月、中国を舞台にした歴史小説で知られた陳舜臣さんが亡くなった。阪神大震災で被災し、地元紙に「神戸は亡びない」とつづった。この人もまた、被災地と生きた人だった。(柏崎歓)》

 

「変身願望」 紀田順一郎編『江戸川乱歩随筆選』(ちくま文庫)より

《私は人間が書物、本ですね、本に化ける話を書きたいと思ったことがある。しかし、大人の読む短篇にならなくて、いつか少年読物の中へ、ちょっと使ったことがある。(後略)》

 百科事典などの大きな本の背表紙をつなぎ合わせたものを亀の甲羅のように作らせて、それを人の背中につけ大きな本棚に手足を縮めて横たわる。

……じつにバカバカしい着想だが、怪奇小説というものは、こういうバカバカしい所から、だんだん物になって行くことがある。》

『人間椅子』もそういう着想からできた。
 
 
1961年江戸川乱歩賞授賞式での乱歩と舜臣(『別冊幻影城・保存版 No.5 江戸川乱歩』1977年6月刊より)
 
 

『ほんまに』第17号販売店・協力団体  1228日現在
【神戸市中央区】
古書うみねこ堂書林  078-381-7314
ジュンク堂書店三宮店  078-392-1001
ジュンク堂書店三宮駅前店  078-252-0777
書肆スウィートヒアアフター  078-381-6675
清泉堂書店三宮センタープラザ店  078-381-6633
1003(せんさん)  050-3692-1329
陳舜臣アジア文藝館  078-391-0224
トンカ書店  078-333-4720
プラネットEartH  050-3716-3540  
【神戸市灘区】
ブックス・カルボ  078—955-8442
ワールドエンズ・ガーデン  078-779-9389 
【神戸市須磨区】
井戸書店  078-732-0726
【加古川市】
紀伊國屋書店加古川店  079-427-3311
【姫路市】
ジュンク堂書店姫路店  079-221-8280 
【尼崎市】 
街の草  06-6418-3511
【大阪市】
カロ ブックショップ アンド カフェ  06-6447-4777
紀伊國屋書店梅田本店  06-6372-5821
紀伊國屋書店グランフロント大阪店  06-7730-8451
本は人生のおやつです!!  06-6341-5335
MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店  06-6292-7383
【大阪府三島郡島本町】 
長谷川書店  075-961-1560
【京都市】
古書 善行堂  075-771-0061
レティシア書房  075-212-1772
【大和郡山市】
とほん  080-8344-7676
【名古屋市】
ちくさ正文館  052-741-1137 
【岐阜市】
徒然舎  058-337-0444
【東京都】
NR出版会事務局  03-5689-3886
往来堂書店  03-5685-0807
古書ますく堂  090-3747-2989
トマソン社 通販 http://tomasonsha.com/
MARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店  03-5456-2111
【新潟市】 
北書店  025-201-7466
 
(平野)
 
 

 

2015年12月27日日曜日

『ほんまに』連載(4)


 『ほんまに』連載から(4

内海知香子 「続 映画屋日乗  映画に新しいもの無し!?」

 兵庫県映画センター勤務。映写機担いで学校や公共施設をまわっている。
「4DX」(シーンに合わせて座席が動いたり、水・風・煙・光などを体感させる)や「IMAXシアター」という高画質・高音質・特大画面やら、新しい施設や映写システムが登場している。上映もDJ付きとか、「爆音上映会」とか館内で踊ったりし声援していい「ライブ型」というのもある。

……ネット配信で家のテレビやパソコン、スマートフォンで手軽にいくらでも映像作品が楽しめる今の時代、映画館もあの手この手を使って観客に足を運んでもらう工夫をしないとやって行けなくなっているわけです。》

 これから映画・映画館はどうなっていくのか? 内海は、

……実は設備(ハード)や趣向の目新しさで客を呼ぼうという発想は、今に始まったことではなく、映画界はその草創期から繰り返し行ってきたことなのです。》 

 と冷静に現状を認識している。
 映画における数々の仕掛けや工夫、開発の歴史を紹介する。たとえば、1905年に登場した「ヘイルズ・ツアーズ」(遊園地の擬似列車体験装置)は「4DX」の原型だ。1950年には3Dも「立体映画」の名前で登場した。巨大画面は1950年代には「シネラマ」、60年代には「スーパー・シネラマ」が開発されている。
 DJ付きというのは昔の「弁士」でしょ? 
「ライブ型」なんて、私が子どもの頃、ヒーローが駆けつけるクライマックスでは必ず声がかかったし、拍手も起きた。観衆がストーリーに興奮するというか、「映画」を楽しんでいた。

《そんなこんなを見てみると良くも悪くも映画界に新しいものは無いなとつくづく思います。だからその時代にしかない趣向はその時代に楽しむとして、本来の意味で真に新しいものはやはり映画の中にしか無いわけです。作り手も演じ手も、新しい才能は日々生まれています。》
 
 他の連載は、ゴローちゃんのイラスト「電車店長」(海文堂最後の店長・Fの日常)と私の「もっと奥まで~」という脱力おバカコーナー。高尚硬派な誌面(?)だからこそ、おバカは必要という思いがありまして、二人がそこをイヤイヤ担当しているわけです。ウソです、ほんまは喜んでやっています。

 作っている者が言うのもなんなんですが、特集・連載とも良い書き手ばかり(編集部は別にして)です。ミニコミにこのメンバーが協力してくれ、地元メディアが取材してくれるというのは恵まれています。ありがとうございます。
 販売してくださる本屋さん、古本屋さん、それに他業種の皆さんにもお礼を申し上げます。

 今号の特集について、年代の差というか、「陳舜臣」認識が編集部内でも温度差があります。40代になると関心がグッと落ちます。今号では私(60代)のわがままを通してもらいました。
『ほんまに』の立場上、やっぱり「神戸」という地域性は前に出したい。次号はどうするのか、ウダウダ話し合います。
(平野)

2015年12月25日金曜日

『ほんまに』連載(3)


 『ほんまに』連載から(3
 

市岡陽子 「新刊書店員 日々あれこれ 『ミナ ペルホネン』から見える、本の住所のこと」

 喜久屋書店阿倍野店勤務。店頭であれこれ考える日々。
『カーサ ブルータス』(マガジンハウス)という月刊誌について、

……おしゃれで、そして少し厄介な雑誌である。おしゃれ具合が多岐にわたりすぎて、メイン特集に応じて雑誌の置き場所が変わってくるのである。(中略、特集はインテリア、雑貨、旅、デザイン、建築、カフェなど)本屋の陳列にもちょっとしたセンスが試されるのである。》

 彼女が注目したのは同誌のムック版『ミナ ペルホネンと皆川明』(以下、ミナ)。ファッションブランドだそう(私はまったくわかっていない)。雑誌売り場のどこにあるのか探す。売り場を34巡してインテリア雑誌コーナーで見つけた。彼女にとって「ミナ」はファッションもしくはデザイン。ベストな売り場はどこなのか、近隣の本屋を回ってみる。
 最大規模店、情報誌棚で隣に『サライ』、『カーサ ブルータス』のバックナンバーもある。
 ファッションビル内の老舗は建築雑誌棚で平積み。
 セレクト系書店では入口で発見、隣に『つるとはな』、『マッシュ』。

……「リアル書店」の最後の砦は、担当者のセンスや気持ちの向け方が感じられるような並べ方であると思う。(中略)
……雑誌でも実用書でも専門書でも、本屋の売り場がジャンルを飛び越えた活発なクロス性や、基本を押さえた上での「遊び」や「余裕」が生まれれば、本屋はもっと楽しくなると思う。スタッフ総出で売り場全体を、クロスワードパズルを埋めるようにフォローしていけば、ジャンル担当者だけに任せきりで生じた穴ぼこもいつしか行き届くようになり、「自分が欲しいものを見つけに行く本屋」本来の楽しさをお客さまと共有できるのではないか。(後略)》

永田收 写真・文 「まちと古本屋と 〈春日野道・勉強堂書店〉」

 写真家、新連載。阪急三宮から東に一駅、「老舗の商店街の一つで戦前から戦後のある時期まで隆盛を極めた」場所。大工場がいくつもあって、工員さんの仕事は交代制、昼夜を問わず人通りが絶えなかった時代があった。阪神淡路大震災後、工場は移転し、集合住宅や公共施設ができた。

《その繁栄の余韻はいまでも商店街の喫茶店、飲食店の多さに感じることができる。だが、私の興味は商店街の中ほどにある古本屋・勉強堂さんにある。その昔、ふらっと入って郷土史関係の本が充実しているのを発見し、以来散歩の途中、立ち寄るのを楽しみにしてきた。》

 店主は二代目。先代が復員して露店から始め、昭和30年頃に店舗を構えた。二代目は昭和46年に家業を継いだ。高度成長の時期で深夜まで店を開けていた。しかし、商店街周辺の環境変化、住民の高齢化、本の世界もデジタル化が進むなど、店主は不安を覚える。

《しかし、客からすれば歴史を持つ店で、いつ言っても裏切らないものがあることは心の支えになる。勉強堂さんもそんな店の一つであり続けてほしい。勝手な望みかもしれないが。》

(平野)

『ほんまに』販売協力店追録  
【新潟市】 北書店  025-201-7466
【東京都】 MARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店  03-5456-2111
【尼崎市】 街の草  06-6418-3511

 セ~ラ編集長からの情報。こんな本屋さん応援サイトができました。スタートしたばかりなのに、あっちこっち取材してはります。
「読読(よんどく)」 http://yondoku.jp/

2015年12月24日木曜日

『ほんまに』連載(2)


 『ほんまに』連載から(2

林哲夫 「パリ古本紀行 ゴッホ村の古本屋」

 画家で古本愛好家、装幀家、著書多数。
 パリ滞在中、林はゴッホ村(オーヴェール・シュル・オワーズ、パリから鉄道で40分ほど)に古本屋があると教えられて、「むらむらット行きたくなった」。観光客がいっぱいの場所は敬遠しているのだが、

《しかーし、古本屋と聞いては話は違う。しかもただの古本屋ではなく、使わなくなった貨物列車に本を並べているというではないか。出かけないわけにはいかないだろう。》

 10月、木々は黄葉し、風は冷たい。駅のそばに「ラ・カヴェルヌ・オ・リーヴル(本の洞窟)」という看板、煉瓦の建物。古本屋が開くまで、ゴッホゆかりの場所をまわる。ゴッホ兄弟の墓にも詣でた。

《季節が巡れば、墓地の周りにはゴッホの絵の通りの麦畑が広がるのだろう。むろん十月に麦が繁っているはずもなく、耕された大地だけが露出していた。視界の果てで白い鳥がまばらに飛び立つ。なんだかんだケチをつけても、感慨なしとは言えない。どんな必然か、あるいは偶然があって、ゴッホはこんな辺鄙な村であれほど類いまれな絵を描いた……描かねばならなかったのだろう?》

「本の洞窟」に入る。入口脇にペーパーバックや雑本、煉瓦倉庫の中には革装の本、ショーケースに稀覯本。

《本格的な古書店の顔つきだ。本で溢れる倉庫の端まで行くと、噂通り、貨車が連結されている。郵便車なのか何なのか、元から備わっている仕切り棚をそのまま本棚として使っており、ちょっと他では見られない光景だろう。このワゴンだけでもわざわざゴッホ村まで足を伸ばした甲斐があった。》

 ところが、古本強者の「触角がピピッと動かない」。それにどの本にも値段表示がない。店の人間の姿がない。「物足りない気持ち」で洞窟から出た。駅前の道路は乗用車と観光バスで大渋滞、パン屋には長い行列。

《世界中からこれだけの人を集めているのだ。本の洞窟ももう少し商売熱心なら、それ相応の成功が約束されているはずなのに、惜しい、じつに惜しいなあ。後ろ髪を引かれながらパリへ戻る列車を待った。》

「本の洞窟」のことは林ブログで。
http://sumus2013.exblog.jp/24561781/


佐藤ジュンコ 「月刊佐藤純子 新潟店番留守番号」

元書店員、現在イラストレーター、仙台在住。著書に『佐藤ジュンコのひとり飯な日々』、最相葉月著『辛口サイショーの人生案内』ではイラスト担当(いずれも2015年ミシマ社刊)。

イラストエッセイをどう紹介しよう。9月に新潟市の北書店で留守番・店番したときのこと。店主は佐渡に出張。

(平野)またおバカ話です。ジュンコさんは私の高校時代の3番目の初恋の人と同姓同名同漢字で、書店員時代お名前を知って勝手に親近感を持って『ほんまに』第14号に原稿依頼しました。

2015年12月23日水曜日

『ほんまに』連載(1)


 『ほんまに』連載から(1
 

空犬太郎 「それでも『町には本屋さんが必要です』(と言いたい) 町本会以降の本屋さん」

「町には本屋さんが必要です会議」の活動は2014年末でいったん終了。でもね、本屋応援活動はずっと続いています。こちらを。


 本稿では「町本会以降の本屋」=2015年の出来事をまとめる。
 止まらない新刊書店の閉店連鎖
 新しい書店の登場・町本会から生まれたもの
 町の本屋のおやじさん

髙田郁 「旅先の本屋さん」 

《仕事でもプライベートでも、よく旅をします。旅先で必ず訪れるのが、その土地の本屋さんです。たとえば初めて訪れた場所であっても、本屋さんのドアを潜って棚を眺めると、どこか懐かしくて、妙に心強く思えるのです。
 誰も知る人が居なくても、何とかなりそうだ、と信じられるから不思議です。》

 作家になる前から毎年訪れていた北海道陸別。冬の夜、雪の中を一人歩く。本屋の明かりを見つけて「幸せな心持ち」になる。名乗らず通っていた。当地ゆかりの作品を書いて、「作家として」挨拶に行った。すでにお店の人とは顔見知りになっていて、照れながらお礼。
 山本書店、「小さな本屋さんですが、何とも居心地の良いお店」。

石橋毅史 「馴染みかけの町へ 2 台湾編」
 本屋を取材するフリーランスライター。近著『口笛を吹きながら本を売る』(晶文社)。

台湾での本屋取材の合間に覗いたお茶の店でのこと。店主が片言の日本語で説明して、3種類のお茶を選び、時間をかけて淹れてくれる。店主は穏やかな笑顔で高いものを勧める。「たしかに、いちばん香りがよく、美味かった」。この旅で唯一の「ちょっと値の張る買い物」だった。店主は何十種類のお茶から石橋の身なりや雰囲気を判断して、「提示すべき三つの茶葉を即断」していた。

《折を見て訪れたい場所が、またひとつ増えた。》

 それで現地の本屋のこと。

《出会った小さな本屋たちは誰もが政治や生活困窮者の救済といった社会問題に熱心で、それが本屋としてのアイデンティティになっているようだった。この波は日本にもやって来るような気がする。》
(平野)
『ほんまに』販売協力の本屋さん追録

【大阪府三島郡島本町】 長谷川書店  075-961-1560
【東京都】 往来堂書店  03-5685-0807

ありがとうございます。申し込み・問い合わせは〈くとうてん 078-335-5965〉まで。
 
『ほんまに』新聞紹介記事を見て同級生が電話をくれました。
「毛、なくなったなあ」って、あんまり失礼じゃあーりませんか!

 

2015年12月21日月曜日

『ほんまに』陳舜臣(3)


 『ほんまに』〈陳舜臣〉(3

中島俊郎 「活字のごちそう――陳舜臣と光村利藻」
 甲南大学文学部教授。愛読する舜臣著作は『神戸というまち』(1965年至誠堂、81年『神戸ものがたり』平凡社。98年平凡社ライブラリー版で阪神淡路大震災後の文章を加えた)。

《改訂を経ながらも、先生の眼がそそぐ神戸の姿は一貫していた。神戸気質を「軽佻浮薄な野次馬根性」で「功利的にすぎる」というような見方である。また「悪趣味である。伝統のブレーキがないから、野放図になりやすい」と神戸人には少々厳しい観察がくだされる。(中略)でも、限りない愛情に裏づけられた言葉であるのをどの読者も行間からすぐに感知し、「そのとおり」とうなずいてしまう。》

 舜臣はその「軽佻浮薄な精神を体現」した神戸人の一人に光村利藻(18771955)を挙げる。父親の富を受け継いだが、海軍好きの遊び人。当時のジャーナリストたちが批判している。一方、印刷業では草分け的存在であるし、日本で最初に映画を撮影し、「智徳会雑誌」という豪華な文芸雑誌(1894創刊、幸田露伴、樋口一葉、泉鏡花、尾崎紅葉らが参加)を出版した。
 教授は古書店で『光村利藻伝』を入手、追悼録だが利藻の文章もある。

……これがまた秀逸な回顧談となっていて、神戸の町並み、日常生活の空気まで彷彿とさせる。放蕩者の常で、とりわけ食についてはうるさい。》
 
舞子で取れる「鳴門鯛」、明石のたこの卵「海藤(かいとう)()」、「あなごの徳利蒸し」、「醸造家が自家用に造る酒」などを並べる

《きわめつけは神戸牛である――「貴島という洋食店あり、その主人の料理するビフテキの味今も忘れず。その後数十年いまだそれ以上のビフテキを味わいしことなし」と書きつけている。》

 教授はこの一文に、食材を大切に扱う調理人の姿と食材の味を感じとる。

 特集では、他に、舜臣の言語世界、引っ越し歴についての文章あり。陳舜臣アジア文藝館の前田さんが資料を提供くださいました。感謝申し上げます。

(平野)
「朝日新聞」1221日大阪版夕刊で取り上げていただきました。ありがとうございます。取材は17号編集中で、書影はバックナンバーです。



 社会面なのでまわりの記事は、「覚醒剤密売」に「毒素無届け運搬」「無免許バイク」。「春日大社本殿屋根葺き替え」が明るいニュース。

2015年12月20日日曜日

『ほんまに』陳舜臣(2)


 『ほんまに』〈陳舜臣〉より(2

「親族に聞く 素顔の陳舜臣」

弟・(かい)(しん)さん 
 介臣さんは10人兄弟姉妹の末っ子、舜臣とは18歳離れている。兄は寡黙で、本当に真面目な人。

《作家としても兄としても感じていたのは彼が弱者に対して大変シンパシーを持っていたことでした。マイノリティーが居心地よくなるように常に考えていたように思います。生まれたときは日本籍、敗戦と同時にそうではなくなった。神戸は華僑が多いと言ってもマイノリティーには変わりない、一番ものを考える頃にそういうことになったことは兄を戦後、台湾に向かわせた要因のひとつかなと思ったりします。(中略)
 神戸で活動を続けたのは神戸にふるさとを感じていたからだと思います。東京で振り回されるのもいやだったんだと思いますけど、書きたいものだけを書いていたいという気持ちが強かったのではないかなと思います。あとやっぱりメジャーよりマイナーを愛したこともあるんではないでしょうか。》

甥・友昱(ゆういく)さん 
 7番目の弟のお子さん。小さい頃、家に遊びに行くと、お客さんが来ていて、一緒に食卓を囲むこともたびたび。あとから思えば、司馬遼太郎にも会っていた。
 伯父は親戚が集まっても口数少なく、みんなが喋っているのをビールを飲みながら眺めていた。

《私が子供の頃にはじまったNHK『シルクロード』で喋っている姿は普段見ている伯父とまったく違う印象だったのでびっくりしたことを覚えています。父もあんなに喋るとは思わなかったと驚いていました。伯父がテレビに出始めた頃、当時生きていた祖母は毎回すごく心配していたと聞いています。》
 
(平野)

2015年12月19日土曜日

『ほんまに』販売店・団体


『ほんまに』第17号販売協力店・団体  
1219日現在

【神戸市中央区】
古書うみねこ堂書林  078-381-7314
ジュンク堂書店三宮店  078-392-1001
ジュンク堂書店駅前店  078-252-0777
書肆スウィートヒアアフター  078-381-6675
清泉堂書店三宮センタープラザ店  078-381-6633
1003(せんさん)  050-3692-1329
陳舜臣アジア文藝館  078-391-0224
トンカ書店  078-333-4720
プラネットEartH  050-3716-3540  

【神戸市灘区】
ブックス・カルボ  078—955-8442
ワールドエンズ・ガーデン  078-779-9389 

【神戸市須磨区】
井戸書店  078-732-0726

【加古川市】
紀伊國屋書店加古川店  079-427-3311

【姫路市】
ジュンク堂書店姫路店  079-221-8280 

【大阪市】
カロ ブックショップ アンド カフェ  06-6447-4777
紀伊國屋書店梅田本店  06-6372-5821
紀伊國屋書店グランフロント大阪店  06-7730-8451
本は人生のおやつです!!  06-6341-5335
MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店  06-6292-7383

【京都市】
古書 善行堂  075-771-0061
レティシア書房  075-212-1772

【大和郡山市】
とほん  080-8344-7676

【名古屋市】
ちくさ正文館  052-741-1137 

【岐阜市】
徒然舎  058-337-0444

【東京都】
NR出版会事務局  03-5689-3886
古書ますく堂  090-3747-2989
トマソン社 通販 http://tomasonsha.com/ 

(平野)ご協力に感謝いたします。

2015年12月17日木曜日

『ほんまに』陳舜臣(1)


 『ほんまに』〈陳舜臣〉より(1

千鳥足純生 「陳舜臣のミステリ 神戸の今昔」

〈古書うみねこ堂書林〉店主にして探偵小説研究家。陳舜臣の作品から『柊の館』と『虹の舞台』を解説。陳舜臣と会ったことがあるそう。初回は「横溝正史生誕地碑」建立の時、2度目は神戸文学館の企画展「探偵小説発祥の街 神戸」準備で。

……氏のミステリ作品の数多くは新刊書店の棚から消えて久しい。そのすべてとは言わないが、せめてここに書いた『柊の館』や『虹の舞台』を含む名高い作品はいつでも読めるようにしていただきたいと思っているのは筆者だけではないだろう。》

 
辻信一 「陳舜臣が描いた故郷~海岸通界隈の戦前と戦後」

 まちづくりコンサルタント。陳舜臣が『枯草の根』と『三色の家』に描いた神戸のまちをたどり、今残る痕跡を訪ねる。
 両作品とも中国人・陶展文が主人公。
 陳舜臣が小学生時代に住んでいた家が「三色の家」で、栄町通と海岸通の中間「内海岸」と呼ばれる地域にあった。海産物の問屋が並び、潮の香りを漂わせていた。今は通称「乙仲通」。
 小説の時代は昭和8年。陶は東京での留学生活を終え帰国する準備をしていた。神戸の友人から父親が死んだという連絡が入る。

《明治初期の開港当初の神戸港は、メリケン波止場や海岸通付近が中心であり、中小の貿易会社や流通関係の施設群が海岸通周辺に多く立地していた。『三色の家』では、この時代の「匂い」が色濃く表現されており、ちょっと古手の神戸市民の多くが知っている港の匂いを思い出させてくれる。》

『枯草の根』の時代は昭和36年頃。陶は海岸通の事務所ビル内の中華料理店店主、漢方医。武術も教えている。ビルのモデル「商船三井ビル」、穴門筋や京町筋、海岸通のあちこちを紹介する。保存運動も虚しく解体されてしまった建物が多い。今も近代建築保存・保全の運動は続いている。

 それぞれの時代の地図・写真も掲載し、《昭和初期や高度成長期の神戸を生きた陳舜臣の残り香があるまち》を再現してくれる。

(平野)

2015年12月15日火曜日

『ほんまに』第17号 発売


 『ほんまに』第17号 くとうてん 476円+税

特集 没後1年 [神戸の作家としての]陳舜臣
 陳舜臣と神戸
 陳舜臣のミステリー 神戸の今昔
 陳舜臣が描いた故郷 海岸通界隈の戦前と戦後
 親族に聞く 素顔の陳舜臣
 活字のごちそう――陳舜臣と光村利藻
 世界市民を志向した 陳舜臣の言語世界
 生涯神戸に暮らす 陳舜臣の引っ越し歴

 

連載 空犬太郎 髙田郁 石橋毅史 林哲夫 佐藤ジュンコ 市岡陽子 永田收 内海知香子
「電車店長」も復活!
表紙 イシサカゴロウ 場所はトンカ書店

 遅れると思っていたら、予定通り15日にできました。

 私が今のところ知っている販売店(順次お知らせします)
ジュンク堂書店三宮店 ジュンク堂書店駅前店 
トンカ書店 1003(せんさん)うみねこ堂書林 
MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店 
紀伊國屋書店グランフロント大阪店 

(平野)